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 Ⅰ 「日本人の法意識」を読んで

川島武宜著「日本人の法意識」を読んだ。といってもかなり軽く。

そこで、ある国に法律ができて、その国民と法律との適応度について指標になるものについて参考になる点を本書に沿ってメモしておきたい。

 

Ⅱ 本書の問題意識について

 (1)日本における法典編纂事業は、治外法権の撤廃のため、つまり政治上の手段のため に行われたものであった。なぜなら、裁判権の回復のためには裁判制度・法律を列強の承認するようなものにする。それが条件であったためである。

(2)上記のような経緯で行われたことから、当時の日本の生活と異なる要素が盛り込まれた法典となっていた。したがって、本書の問題意識は、①明治の近代法典の壮大な体系と現実の国民の生活のズレ、②そのズレは近代化においてどのように変形したか、という点であった。

(3)本書での「法意識」の意味内容として、意識的な面と無意識的な面に分けられている。つまり、人々の社会行動の決定に法がどのように影響を及ぼしているかについて、a.法的認識(法的な知識)、b.法的価値判断(個々人の価値観)、c.法的感情(直感)の面から明らかにする必要があるとしている。これらを明らかにすることが、法的社会統制の現実を明らかにすることの第1次的作業であると述べている。

(4)法は従来、「義務」の側面を重視していた。他方で「権利」の側面に着目する思考が薄いのではないか。よって、権利及び法律についての意識には「義務本位」な考え方に偏っていることが指摘されている。また、所有権についてその意識つまり、独占排他的な所有権という意識が時代の流れに従って明確になっていくということ、契約に対する意識も同様であることが示されている。

 

私見

 本書で述べられていたこと、特に民事訴訟について日本人があまり訴訟という白黒つけることを忌避する傾向があることやその原因として「協同体」的な関係の破壊を嫌がるからであることというのは、本書が発行された約60年前から今日までにほとんど常識として形成されていると感じる。

そして、所有権に係る独占排他的な権利という意識に着目して、その国の法律に対する国民の認識を理解することが有益であるように感じた。

また、契約の締結に対する意識に着目することで、その国の国民性を理解することが可能であるかもしれない。

上記の点について、これから法整備支援や比較法的な視点から勉強をする際には意識しつつ改めて考えてみたいと思う。

 

                          夏休み入りたての研究室にて